※竣工から8カ月、竣工写真を撮りましたので改めて事例紹介です。
【山東の家】
静岡県浜松市には天竜川という大きな河が流れ、その源流の山は美しい杉・桧の人工林として有名です。
「山東の家」は天竜の山のふもとに建つ、木こりさん家族の住まいです。
新しく区画分譲された敷地の西には小高い山、北側には製材所の敷地
と、周辺環境に恵まれた立地。
しっかりものの奥様と3人の可愛いお子さん、家族みんなでのびのび過ごせる家を目指しました。
2階建ての建物に1間(約1.8m)幅で下屋がついた間取り。
多角形になっているコーナー部分がこの家の特徴です。
下屋部分の外壁は杉板(下見板張り・ウッドロングエコ塗り)
2階建て部分の外壁はガルバリウム鋼板小波板(こげ茶・横張り)
玄関を開けると正面は洗面所→浴室、左手に玄関ホール、の2WAY。
浴室直結のアクセスを設けたのは
汚れて帰ってきた子供たちやご主人がまっすぐ脱衣場へアクセスできるように。
玄関ホールの床、式台は漆塗りです。
赤い弁柄で着色し、生漆(きうるし)で仕上げた床板は深いボルドー色。
上品で趣のある仕上げが好きで漆塗りの仕上げをポイントに入れることが多いです。
たくさんの人を迎え、見送る
そんな場所は空間も少ししつらえたいと思います。
住まい手さんが拾ってきてくれた小石も土間に据え、やさしい空間になりました。
上から見下ろした玄関ホール。
茶の間、家事室、洗面所、2階、といろいろな場へ繋がるジャンクションのようなスペースです。
玄関土間からホールを見ると、階段がナナメに横切ります。
2階に目を向けるとロフトの奥まで見通せます。
「ただいまーー」
と帰宅すると
「おかえりなさい!」
可愛い声が上からふってくる(のかな?)
そして階段の奥は家族団らんの場
奥様のご希望で畳敷きの「茶の間」スタイルです。
4/12角形に切りとったコーナー部は、仲の良いMさんご家族のイメージからどうしても挑戦してみたかった空間でした。
薪ストーブはご主人の唯一のご希望。
左手はご主人の書斎、書斎はその奥で外部物置につながります。
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構造材は天竜の「フジイチ」さんに用意していただきました。
Mさんの切った木も「フジイチ」さんで製材されます。
山東の家は要所要所とてもきれいな材が使われています。
コストに制限があるのでもちろんすべての場所でいいものを使っているわけではありません。
いい材、ちょっと見劣りする材を混ぜながら段取りをしてくださった製材所。
その中から適材適所に材を配した棟梁。
そして、恐らくちょっといい材を使ってくれた棟梁。
皆さんの気配り+手間によって、設計者の範疇から離れたところでどんどん「いい家」になってくれた訳です。
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プランのお話に戻って。
茶の間の横にはキッチンです。
畳に座っている人と台所に立つ人の視線を近づけるため、
台所のフロアレベルは2段(36cm)下げています。
こんな風に。
家族みんなが思い思いの場所で過ごし、でも近い距離に感じる。
ご飯を食べて、お腹がいっぱいになったらごろん。
畳敷きの魅力を再認識した家づくりでした。
2階へ。
裏山の緑がまぶしいくらい贅沢な立地です(この写真は竣工時の5月撮影)
面積が限られているので、あえて間仕切りはつくりませんでした。
階段向こうの1室だけ思春期に突入するお兄ちゃんの個室。
後は家族の成長にしたがって仕切っていきます。
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名称:山東の家
所在地:静岡県浜松市
延床面積:99.79㎡(30.18坪)
竣工:2016年5月
施工:有限会社 石牧建築
構造材:株式会社 フジイチ
写真撮影:内山文寿 (一部、西久保美和 撮影)